Travel YouTube Thumbnail (1)


この日は南アフリカワイン専門店の
アフリカーさんのセミナーに行ってきました。

テーマは「南アフリカで作られる、マイナー品種のワインの魅力

講師はWSETのLV3を所持し、現在ディプロマを目指すというスタッフのFさん。

今回は、緊急事態宣言下のイベントということもあり、アフリカーさん側で医療従事者の方にアドバイスをいただいて開催に踏み切ったようです。

ゆえに、セミナーの人数はまさかの3名/回という体制。

せっかくWSETの方のお話が聞けるのにもったいないというか
コロナ嫌になっちゃいますね本当に。

ワインの提供についても、ボトルを持って回るのではなく、
あらかじめ紙コップにワインを入れ、No.を記載し配布。

セミナーの進行に各自あわせグラスにワインを移しかえるというやり方。
やり方としては安心感があっていいですね。なるほど。




なぜ、マイナー品種なのかを語ろう



まず前提として、南アフリカワインはここ20年で急速に品質が向上したといわれています。
特にそのシーンをけん引しているのが、30代前後の若手生産者たちです。


cropped-logo1

引用:https://swartlandindependent.co.za/

エリアとしては南アフリカの「スワートランド地区」にこれらの若手生産者が集中しています。
スワートランド・インデペンデント・プロデューサーズ(SIP)という団体を彼らが作ったように、これまでと異なる、新しいスタイルのワインを作り始めたことがきっかけと言えるでしょう。


特に仏のAOCのように定められた品種規定がなく、同時に、決まったワインの形やスタイルが確立されていません。

唯一、認知度の高い「ピノタージュ」については、一部変革があるものの、依然として多くは伝統的なローストしたような濃い抽出のものです。
これは旧来型で、しばしば退屈に感じるスタイルのようにも思えます。



よって「フラットに、自由な表現ができる産地」として魅力的な生産国なのかもしれません。
※ただし、洗練されつつある上記SIPの中では「スワートランドのテロワールを表現する能力が評価された結果として、数年ごとに見直す」という前提で品種を定めています


一方で、日本の消費シーンとしては、依然として「南アフリカって言うとピノタージュだよねぇ~」ということをおっしゃる方も多い。残念ながら、時が止まったまま認知が進まなかった証拠でもあります。


とまぁ、若干脱線しつつも、南アフリカは「実験的な・粗削りな」という枕詞がつきますが、革新的な自由度の高い産地の一つであるのは間違いありません。
それゆえに、マイナー品種が出てくるというのはわからなくもなく、一部の品種は現時点ですでに成功していると言えます。




上位生産者を含む10種の南アフリカ マイナー品種のワイン



95976727-F36B-4FC8-B242-384D739537B8


ということで、出てきたワインは銘柄名ではなく、ひとまず品種名で以下に記載します。
※画像のボトルは以下の順の通りではありません。すみません。



①セミヨン&セミヨングリ
②パロミノ
③クレレットブランシュ
④ハシュレヴェリュ
⑤セミヨン


①トゥリガナシオナル&シラー
②トゥリガナシオナル&ティンタバロッカ&トゥリガフランカ
③ケープバルバロッサ
④サンソー
⑤ティンタバロッカ

ううーん、マイナー!!

ということで合計10本。
全部が全部ではなくて要点だけかいつまんでやりましょうか。




■ソーンドーターズ ペーパーカイト 2017
CB0FABE4-8BDF-40C4-B597-A26F62DE2C2A


まず白ワインの1本目から。
セミヨンとセミヨングリのブレンド。
そもそも「セミヨングリってなによ??」って話になるはず。

そもそもなぜ「グリ化」するのかというと、ブドウ品種の突然変異によるもの。

突然変異で、アントシアニンの有・無が発生する。
白品種でアントシアニンが生まれるとグリ化(果皮が赤ばむ)するみたいです。

逆に言うと、果皮が赤いものに対して突然変異でアントシアニンがなくなるケースもあるようで、そうすると、白ブドウ色に変異する。

なるほどなぁ。じゃあちょっと前に「ホワイトサンソー」って話が話題になったけど
それもそういうことなのかな。勉強なります。


ワインのペーパーカイト。
樽は効いていますが、味わいはやや淡白。石のような鉱物的なミネラリティを感じます。
果実はリンゴ。若干の果皮感も。セミヨンらしい香りなのか若干還元的な気も。

17年ヴィンテージですが、樽が一定に効いているのか
少しハチミツみたいな香りも感じられるように思います。

どちらかというと淡白でいぶし銀的なキャラクターのワインです。




■エレメンタルボブ パロミノ2017
7476D915-B986-44C2-BC1D-72CD87F01468


ついで、白の2本目。

ブドウの品種はパロミノ。
シェリー酒に使われる品種で、ワインにすると水っぽい、個性がないと言われるもの、だそうです。


この生産者のエレメンタルボブ、いわゆるオレンジワインの作り手です。
よって、通常ならスキンコンタクトしてるんだけど、ワインを見ると少し色調も濃い気がする。スキンコンタクトしてるのかな。

ただ、品種の個性なんでしょうね。個性がないのが個性というか、香りはニュートラル系です。
若干お米みたいなシュルリー感ありますね。
これもゆっくり飲みたいタイプのワイン。



■クラヴァン クレレットブランシュ 2016
F2961580-C0D8-46C7-9BDB-FD9686A8ACB2


ついで白の3本目。クレレットブランシュ。
主にフランスの南の方、プロヴァンスとかローヌとかラングドッグで生産されている品種です。

これはその場でも「甘い香りがする」って話が出ました。
なんとなく甘やかな香り。

何なのか?と言われるとうまく表現できないんですが「少しお好み焼きソース的な感じの香り」なんですよね。個人的に、以前飲んだ時もそうだったのでデジャブ。再び感じるお好み焼きソースのかほり。

ワインメイクとしては、クラヴァンはいわゆるオレンジワイン、スキンコンタクトをするワイナリーです。テクニカル上は10日のマセラシオン。果皮感のある面白い香りに仕上がっています。






■テスタロンガ エルバンディート マンガリーザ 2017
ED5B6E26-480E-4B23-9731-096A9B6A1C28


そしてハルシュレヴェリュ
ハンガリーなどで作られている品種です。

具体的には、ハンガリーの貴腐ワインであるトカイワインの代表的な品種である「フルミント」の補助ブレンドとして使われます。なお、マンガリーザはハンガリー国宝のブタの名前だそうです。


これは結構酸がしっかりとしていて、アンズみたいな香り。
あと少しハーブみたいな香りも。

石みたいな鉱物感、塩味、酸などメリハリがあって良いですね。
テスタロンガは割とナチュールに寄せる傾向があるので、
これが品種特性なのかどうかはわかりませんでしたが、メリハリがあって、ワインとしては良い印象を持ちました。




■アルヘイト ラコリーヌ 2017
7A44A9A5-DBD5-467D-986D-DD184B8A923D


白ワインの最後はセミヨン単一。アルヘイトのラコリーヌ。
南アのセミヨンって、たぶんこのワインの生産者である「アルヘイト」が間違いなくリードしている品種です。

逆に言うと、アルヘイトがいなければ南アのセミヨンはここまで注目されていないと思う。
よって、アルヘイトの作る白はまず「セミヨン」の使用を疑いましょう。


アルヘイトのもつワインの中でも、トップキュヴェと言うこともあって、まぁ樽も効いてるし、石みたいな鉱物感もあるし、複雑みはあるしで見事です。


今回登場した白ワイン5本の中でも、価格が2ランク上って事もあり、
試飲比較だと明らかにおいしいですね。

アルヘイトのトップキュヴェは3種あって「マグネティックノース」、「ラジオラザルス(生産終了)」、そして「ラコリーヌ」の3つ。

個人的にはラコリーヌが好きです。
理由は単純で、樽が適度に効いててわかりやすいから。はい。




続いて赤です。




■サヴェージワインズ アー・ウィー・ゼア・イェット 2019
B6232C05-B5CF-4E95-8DC1-09F6361150CE


赤の1本目はトゥリガナシオナル&シラーのブレンド。
トゥリガナシオナルはポルトガル系の品種ですね。


前段としてスタッフFさんからは、南アで多く用いられるポルトガル系の品種の説明として
「トゥリガナシオナル」、それと「ティンタバロッカ」の説明がありました。


トゥリガナシオナルの特徴は、濃い色合いと、しっかりしたタンニン。
カシス、ラズベリー、ハーブ、リコリスなどの香り。そして凝縮感。


これに対して、ティンタバロッカの特徴は果皮が薄いのでタンニンが強すぎない。
プラム、チェリーなどの香り。基本的に糖度が豊かに仕上がり、ゆえに発酵後のアルコール度数も高くなる。

また、ティンタバロッカの「果皮が薄い」点については、南アのスワートランドでは果樹が枝を変形させ、房を光から身を守るという自己進化をしているそうです。


へーなるほどな。

ともにポルトガル系の品種って、聞いたことはあるけどひとくくりにしてました。
トゥリガナシオナルはタンニンが強くて、ティンタバロッカは果皮が薄いからタンニンが強すぎない。でも糖度は高い、か覚えておこう。



という話の影響かわかりませんが、トゥリガナシオナル&シラーのブレンドのこのワイン、色調極めて濃く見えます。

チョコやブラックチェリーリキュールって感じ。

シラーが混ざってるからか、ムスクとかスミレの香り。
ヴィンテージが若いからか、基本的にはどっしり、力強いタイプのワインです。

生産者のサヴェージって割と中庸な作りな記憶があるんですよね。
たぶんですが、このワインはラインナップの中でも濃い系なのかな。




■ザ・フレッジ レッドブレンド 2015
DA54E1A3-A756-4FC8-9DCA-D3AB4264FB24



赤の2本目は、トゥリガナシオナル&ティンタバロッカ&トゥリガフランカのブレンド。

ヴィンテージは2015年です。

これは一定の経年がある、という事もあってか、かなりタンニンが落ち着いて来ています。
全体的に舌触りに丸みを感じる構造。鼻に抜けるハーブの香り。特にアニスに近い香りがあります。





アニスのキャンディってコレですね。
スミレの香りがあって、アニス使ってるので
数年前、香りの勉強用として、アホみたいに食べました。

たしか成城石井で売っていたはず。

スタッフFさん曰く、最初のワイン(サヴェージのトゥリガナシオナル&シラー)も、たぶん経年でこのワインに近くなるかも?とおっしゃってました。なるほどなぁ。





■AAバーデンホースト ブラッククイル バルバロッサ 2015
3E0D3890-C827-4548-9119-881ADA86A655


ついで、ケープバルバロッサ。
ヴィンテージは2015年です。

これはマイナーもマイナー。スタッフのFさんも「初めて聞いた」品種だそうです。
そもそも作っている生産者がAAバーデンホースト(日本人の醸造家佐藤ケイジさんの師匠)ぐらいですね。


ワインの特徴としては、アメリカンチェリーの香りがします。

タンニンは強すぎず、でもそこそこ濃い。
個人的には「これもお好み焼きソースだなぁ」と思っちゃったのですが、
スタッフFさんいわくコトーブルギニヨン(ピノ+ガメイ)に似てるらしいっす。
表現が綺麗だ。私はお好み焼きって言っちゃう。





さて、ここからサディの2品です。

サディファミリーワインズは言うまでも無く南アフリカのトップ生産者。
もはや神格化されている生産者の一人で、
こう言うのもなんですがストイックな生産者です。

過去コロナが開催される前、南アの生産者が来日してたんですよ。たまに。

そこに名だたる生産者は多くいたのですが、サディはまぁ、来ません。そのくらい、「暇じゃねえんだよオーラ」があるというか、たぶんストイックです。




■サディファミリーワインズ ポフェイダー 2019
F58B2193-C675-450C-B36B-69CC3FF70F67


しかもですね、登場したのはサンソー単一のポフェイダー。
南アのサンソー単一。これすなわち、KOZEが一番注目しているもの。

スタッフFさん曰く、そもそもサンソーは仏の補助品種として知られ、単一で使うにはまず収量の制限をしないといけない。
と同時に、生育としては南アの気候に向いているそうです。

高い樹齢のものが多く南アに見られるという好条件があり、それを用いてさらに収量を制限する。
すると凝縮感、高品質、エレガントなワインができると。なるほどなぁ…。


ということで、サディのポフェイダーですが、
ラズベリー、ザクロ、バラ、梅みたいな香りがあって、香りの量が極めて多い。
ブルゴーニュグラスで楽しみたいくらい香りがムンムンと来る。

しばしば「南アのサンソーはすごいよ」ってKOZEは言ってるつもりなんですが、
あらためてかみ砕いて説明を受けて、かつトップ生産者のものを飲むと「うおおおおお」ってなりますね。

あとからアフリカー店主に聞いても「明らかにこれ(ポフェイダー)はすごかった」とのことでした。はい。



■サディファミリー トレインスプール 2019
2401DDC8-49BD-4C4D-BC69-43667AF54B56


で、最後はサディのトレインスプール。
これはサディがティンタバロッカで作ったらどうなる?って感じでしたが、
ポフェイダーと比べるとちょっと全容がわかりにくい。

基本的には他の生産者と大きくは変わらない気もしますが、鉱物的なニュアンスが強く、より端正な印象を感じます。
わずかに茎のような青いニュアンスがあり、タンニンはやわらかめ。数年待つともっといいかなぁ。




95976727-F36B-4FC8-B242-384D739537B8


ということで合計10種類。

まだまだマイナーな南アというエリアで、かつマイナーな品種という特集。
マイナー×マイナーのかけ算ですが、非常に面白かったです。


繰り返しますが、KOZEが注目しているのは南アの単一サンソーでありまして、おそらくサンソー単一のワインは「南アフリカの」という言葉がついた上で、注目を浴びると思います。

理由としては、他国でKOZEが知る限り、あんまりマネしているところがない。
それと、これは南アの若手生産者が目指しているテーマだと思うんですが、「エレガント系に仕上がる」って点。この両面でウケると思うんですよね。



おまけとして、南アのサンソー。
KOZEが知る限りの良い感じのサンソーは以下です。ついでに書いておきます。

・ラール サンソー
・ヴァンロッゲレンベルグ ジェロニモ サンソー
・AAバーデンホースト ラムナグラス サンソー
・サディファミリー ポフェイダー





ということでアフリカーさんとても有意義でした。
ありがとうございました。